食肉加工業界における「環境自主行動計画」の実施状況について(2009年度)
日本ハム・ソーセージ工業協同組合は、2003年7月に食肉加工業界における「環境自主行動計画」を策定し、その実施状況等については毎年調査を行い公表しております。このたび、2009年度分をとりまとめたので報告いたします。
業種名 | 食肉加工品の製造、販売業 | ||||||||||||
会員企業の主な製品 | ハム、ソーセージ、ベーコン(以下「食肉加工品という」。)及び惣菜等 | ||||||||||||
製品の生産、輸入の動向 | (平成20年) 単位:トン
食肉加工品の国内生産量は前年対比で多少の上向き傾向で推移する一方、ソーセージ類の輸入が農薬検出等で減少 |
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国産原材料の使用量、割合 | (平成20年) 国産原料肉(豚肉、牛肉、鶏肉等)約11.4万トン 輸入肉を含めた原料肉使用量の30.2%うち、主原料である国産豚肉約7.6万トン 21.2% |
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国内の総企業数・総生産量・総生産額 | 食肉加工品の製造・販売業の総企業数・総生産量・総生産額は統計がないため不明。 | ||||||||||||
団体の会員数及びその生産量・生産額 | 食肉加工品の生産数量 :49.6万トン 生産額 :不明 20年度末の組合員数 :152社 |
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フォローアップのカバー率 | カバー率 : 53.6% (下記8社の食肉加工品の生産数量シェアーから推計) カバー率を高める方策の一環として、試行的に上記8社以外の組合員企業からも毎年度のエネルギー使用実績の報告を求めており、2005年には58社から、2006年度には72社から、2007年度は90社から、2008年度には96社から当組合に対し報告があり、生産量では97.3%のカバー率であった。しかし、これらの未参画企業からのエネルギー使用実績報告については、その精度、現行計画におけるCO2排出原単位との整合性や連続性等について、なお検討を要する課題もあるため、未参画企業の参画は、現行計画の見直し時点で検討することとしたい。 |
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フォローアップに参加している企業数及びその生産額・生産量 | 参加企業数 :8社 生産額 :不明 生産量 :26.6万トン |
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業種に係る製品以外の製品を製造している場合のCO2排出量の取扱い(業種間のバウンダリー調整) | 食肉加工品製造工場で、食肉加工品以外の製造を行っている場合にCO2の排出量を区別できないので、バウンダリー調整は行なっていない。 | ||||||||||||
自主行動計画の情報公開の方法 | 団体発行の月刊誌「日本食肉加工情報」及び当組合のホームページに記載している。 | ||||||||||||
原単位の算出方法 (基礎となる生産量等の算出方法を含む。) |
(1)業界全体のエネルギー消費量は、上記8社の実績報告数値に、次の方法で算出した2008年度の生産数量を乗じて拡大推計した。 生産数量=食肉加工品の生産数量÷ (8社の食肉加工品の生産数量+8社の食肉関連惣菜等の生産数量) (2)原単位は、(1)により推計した業界全体のエネルギー消費量を食肉加工品全体の生産量に乗じて算出した。 |
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CO2排出総量での数値目標の設定。 | 現行の環境自主行動計画は、CO2の排出原単位で削減目標を定めているが、今後CO2排出総量での削減目標については、現行計画の見直し時点で設定の可能性を検討することとしたい。 |
I 温暖化対策(CO2排出抑制対策)
1.自主行動計画における目標
食肉加工業界としては「エネルギーの使用の合理化に関する法律」等に定められた事項を遵守するとともに、各企業・工場において使用エネルギーの削減及びエネルギーの効率的利用に取組み、CO2排出量原単位を2003年の実績から2010年までの間におおむね5%程度削減することを目標とする。
2.目標達成のための取組み
(1)目標達成のためのこれまでの取組み
- CO2排出量の少ない(重油からガス・電力等に切替)エネルギーへの転換
- 製造方法の改善、機械、設備の定期的な点検整備、稼働の効率化、エネルギー使用量の進行管理等を通じたCO2排出の抑制
- 設備更新時の高効率ボイラー及び高効率冷凍・冷蔵設備等の導入
- コジェネレーションシステム導入の促進
- 製造工程の効率化、設備の断熱の適正化等による熱ロスの低減
- 熱交換機、蒸気の排熱利用、熱回収の促進
- インバータによる省電力
- 工場の統廃合・生産ライン変更に伴う生産性向上による省エネ削減
- 省エネ検討委員会を設置し、(財)省エネルギーセンターによる工場の省エネ診断を行い、エネルギー管理標準書を作成しての管理体制を構築している。
- 工場の屋根等断熱効果の高い塗料による塗装
- 高効率型照明器具に変更し取り付け台数削減・エネルギー使用量の合理化
- 社内研修等を通じ省エネルギー意識の高揚
(2) 2009年度に実施した対策の事例、推定投資額、効果
- 燃料使用の合理化に関し、ISO14001活動として各職場での省エネ改善活動を実施するほか、ボイラー運転の効率化と状況監視、蒸気配管系等の見直しを行った。
- 油の価格高騰の原因も有り、発熱量の低い重油から発熱量の高いガス・電力に転換した。
- 高効率型冷凍設備を導入するほか、空調機・熱交換機等の更新を行い、電力エネルギーを節約した。
- コジェネレーションシステムを導入し、電力・ガス等エネルギーを排熱利用することでエネルギー利用効率を高めた。
- 炉筒煙管ボイラーから貫流ボイラーへ更新し、又、コンプレッサーの機器更新による重油の使用効率をあげた。
- 電気使用の合理化に関し、冷蔵庫の設定温度の見直しやドアの開閉数の減少、不要な照明の消灯、こまめな消灯に努めるとともに、機械の待機状態での電源切り・空転の防止を行った。
- 製品保管冷蔵庫・製品冷却庫の断熱保温強化工事を実施し、保冷効果を高めた。
- 夏季に於いて増設した空調設備、室外機に散水設備を全機に取付け消費電気量を削減した。
- 天井裏断熱強化により冬季に於ける凍結防止ヒーターの稼働を停止させ、蒸気消費量を削減した。
3. エネルギー消費量・CO2排出量の実績及び見通し
1990 年度 | 2003 年度 | 2004 年度 | 2005 年度 | 2006 年度 | 2007 年度 | 2008年度 | 2009年度 | 2010 年度 | |||
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実排出係数 | クレジット調 整後排出係数 |
実排出係数 | クレジット調 整後排出係数 |
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生産量4 (t) |
525,306 | 490,499 | 503,579 | 494,365 | 487,374 | 487,888 | 496,173 | 496,173 | 504,706 | 504,706 | 491,000 |
エネルギー 消費量 (原油換算kl) |
192,789 | 178,238 | 189,314 | 189,999 | 184,037 | 183,403 | 184,937 | 184,937 | 186,525 | 186,525 | 183,000 |
エネルギー 消費原単位 (原油換算kl /生産量t) |
0.367 | 0.363 | 0.376 | 0.384 | 0.378 | 0.376 | 0.373 | 0.373 | 0.370 | 0.370 | 0.373 |
CO2排出量 (t) |
392,776 | 372,158 | 386,853 | 371,277 | 343,954 | 370,125 | 367,229 | 336,637 | 355,476 | 329,629 | 354,000 |
CO2排出原単位 (CO2t/生産量t) |
0.748 | 0.759 | 0.768 | 0.751 | 0.706 | 0.759 | 0.740 | 0.678 | 0.700 | 0.650 | 0.721 |
4. クレジット等の活用状況と今後の取得予定
(京都メカニズムによるクレジット、国内クレジット、排出量取引の国内統合市場への参加)
食肉加工製造業の8割近くが中小企業であり、排出量取引は難しいと考えられるが、環境委員会で検討する課題としたい。
5. CO2排出量増減の要因分析
(1)1990年度~2009年度のCO2排出量増減の要因分析
2003~2009年度におけるCO2排出量は、1990年度(推計値)に比べ10%程度減少しているが、これは主として食肉加工品の生産量の減少によるほか、熱源転換及び電力の効率的利用の推進等を通じ、CO2排出原単位が大幅に改善したことによるものとみられる。しかし2007年度は電力の炭素排出係数が10%強高くなりCO2の排出量も前年対比10%程度排出量が増した。そのためCO2排出原単位が0.04ポイント上がった。2008年度は前年比1%程度減少した。2009年度はCO2排出原単位がさらに前年比0.04ポイント下がり、CO2排出量は前年比3%程度減少した。
(2)2009年度の排出量増減の理由
2009年度における食肉加工品業界全体のCO2排出量は約35.5万トンと推定され、前年度に比べ3%程度減少している。これは、食肉加工品企業において、(1)A重油からCO2排出量が相対的に少ない購入電力や都市ガスへ熱源転換が進んだこと、(2)高効率型機器への更新、断熱材・インバータの設置等きめ細かな対策の実施により、電力使用効率の向上に努めたものの、2007年度の電力の炭素排出係数が、0.106上がり1.110となったことによるものであってCO2排出原単位も0.05ポイント上がることとなったが、2008年度の電力の炭素排出係数が1.090と前年対比で0.02下がったが、生産量が、約8,300トン増加したにもかかわらず、CO2排出量は約11,700トン減少した。
6. 2010年度見通し及び目標達成に係る評価等
(1)2010年度における生産活動、CO2排出量等の見通し
今後の食肉加工品の国内生産量は、少子高齢化等を背景とした需要の減退等により、全体として横ばいないし減少傾向で推移するものと見込まれる。このため、今後のCO2排出量等の見通しについては、特段の事情の変化がない限り、各企業工場における使用エネルギーの削減・効率的利用の推進等によってほぼ目標を達成できるものと考える。
(2) 目標達成に係4る評価
- 電力の排出係数が改善された場合、目標達成は可能と判断する
CO2の排出原単位については、2003年度の0.76から2009年度も同水準の0.70となり、CO2の排出量も37.2万トンから35.5万トンへと僅かに減少するにとどまった。こうしたCO2の 削減の停滞は、削減に向けた企業努力にもかかわらず、電力の炭素排出係数が1990年度の1.011、2003年度に1.055(2004年度は 1.020、2005年度は1.033、2006年度は1.004、2007年度は1.110、2008年度は1.010)で推移していたのだが、2009年度に1.010と炭素排出係数がやや改善したことによるものである。この係数がより改善され、2010年度の0.832の見通し数値を利用して、計算式に当てはめて推計すると、夏季における異常高温などの特段の事情の変化がない限り、各企業における使用エネルギー(ガス、電力など)の切り替え、電力の効率的利用の推進などを通じて、目標を達成することは可能であると考えている。 - 電力の排出係数が現状のまま推移した場合、目標達成は可能と判断する
今後の食肉加工品の国内生産量は、少子高齢化等を背景とした需要の減退等により、全体として横ばい、ないしは減少傾向で推移するものと見込まれる。このため、今後のCO2排出量の見通しについては、特段の事情の変化がない限り、各企業工場における使用エネルギーの削減・効率的利用の推進等によってほぼ目標を達成できるものと考える。
7. オフィス、運輸部門のCO2排出削減の取り組み
(1)オフィス
-
- 各地に分散している事務所を統合し電気量の削減を実施する。又、高効率型照明器具に変更し、台数を削減し、購入電力の削減に努める。
- 食肉加工品製造業の85%近くは中小企業であり、その大半が事務部門と工場とが一体化しているため、オフィス部門の排出量の把握、数値目標の設定は難しいと考えられる。
(2)自家物流
運輸部門のCO2排出削減については、外部へ委託している企業が多く把握は難しいが、自社配送については、次年度より報告を求め排出量把握を行いたいと考える。
8.森林吸収源の育成・保全に関する取組み
組合員企業によっては自ら「森林を守ろう運動」を展開するとともに、各地の森林保全活動や水辺の環境保全活動等に積極的に参加している。
II 廃棄物対策
1.自主行動計画における目標
ハム・ソーセージ・ベーコンの製造工場における廃棄物(動物性残渣、汚泥、廃プラスチック等)の削減及び再資源化を図り、2003年度から2010年度までの間に廃棄物の排出量をおおむね5%程度削減するとともに、再資源化率をおおむね80%とすることを目標とする。
2.目標達成のための主要な取組み
- 排水処理施設の効率的運用、容器包装の過剰な使用の抑制・ロスの低減・素材の見直し等による廃棄物の排出抑制
- 動植物性残渣及び汚泥類の肥料化及び飼料化の促進
- 廃プラスチック等の再利用化及び廃油等の再利用化の促進
- 有機物酸化装置による汚泥削減
- ISO14001活動で歩留向上に取組み動物性残渣の削減
3.2009年度に実施した廃棄物対策の事例、効果
- 排水処理施設の改善、効率的運用に努め、汚泥発生量を削減した。
- 植物性余剰物について破砕・脱水による減量化(破砕機で粗くカットした後に圧搾機で水分と繊維分に分離、水分を処理層で浄化、繊維分は生ゴミ処理機で減量化)を行い、発生量を抑制するとともに、抽出残渣の飼肥料化を行った。
- 高濃度タンパク廃液を自社排水処理施設で処理することにより動物性残渣の減少。
- 製造工程を見直し、仕損品・落下防止対策を講じ削減に努めた。
- 動物性余剰物について肥料化(ボーンミール)した。また、汚泥について、脱水減量後、堆肥化した。
- 包装用フイルムを熱源として再利用することにより廃棄物の排出量を削減した。また、廃油・金属くずのほか、ダンボールの古紙への再資源化を進めた。
- 消化層内にマイクロバブル機械装置を取付け、従来より細かい空気を通すことにより糸状菌を活性化させ汚泥量の削減に進めた。
4.廃棄物排出量・再資源化量の実績及び見通し
1990 年度 | 2003 年度 | 2004 年度 | 2005 年度 | 2006 年度 | 2007 年度 | 2008 年度 | 2009 年度 | 2010度 | ||
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廃棄物排出量(t) | 77,350 | 77,646 | 71,744 | 72,391 | 72,429 | 72,985 | 68,347 | 70,500 | ||
種 類 別 内 訳 |
動植物性残渣 | 16,692 | 17,094 | 12,880 | 12,711 | 14,091 | 17,699 | 16,680 | ||
汚泥 | 34,580 | 34,223 | 32,089 | 33,004 | 32,255 | 29,735 | 30,701 | |||
その他 | 26,078 | 26,329 | 26,775 | 26,676 | 26,083 | 25,551 | 20,966 | |||
再資源化量(t) | 59,409 | 64,192 | 61,222 | 64,809 | 64,967 | 66,075 | 62,481 | 56,200 | ||
種 類 別 内 訳 |
動植物性残渣 | 11,315 | 13,328 | 11,844 | 11,262 | 10,743 | 14,226 | 12,694 | ||
汚泥 | 32,617 | 32,565 | 30,906 | 31,906 | 32,053 | 29,578 | 30,209 | |||
その他 | 15,477 | 18,299 | 18,472 | 21,641 | 22,171 | 22,271 | 19,578 | |||
再資源化率(%) | 76.8 | 82.7 | 85.3 | 89.5 | 89.7 | 90.5 | 91.4 | 79.7 | ||
種 類 別 内 訳 |
動植物性残渣 | 67.8 | 78.0 | 92.0 | 88.6 | 76.2 | 80.4 | 76.1 | ||
汚泥 | 94.3 | 95.2 | 96.3 | 96.7 | 99.4 | 99.5 | 98.4 | |||
その他 | 59.3 | 69.5 | 69.0 | 81.1 | 85.0 | 87.2 | 93.4 |
5.廃棄物排出量増減の要因分析
(1)1990年度~2009年度
廃棄物排出量は、2003年度は約7.7万トン、2006,2007,2008年度は約7.2万トンであったが2009年度は約6.8万トンとなり約4千トンの減少であった。また、再資源化量は、2003年度は約5.9万トン、2006、2007年度には約6.4万トン、2008年度は約6.6万トンであったが2009年度は約6.2万トンであった。しかし、再資源化率は2003年度の約76.8%から毎年高くなってきており着実に成果を挙げている。
(2)2009年度
2009年度の廃棄物排出量は約6.8万トンで、2008年度と比較すると約4千トン減少した。また、2009年度の再資源化量は約6.2万トン、再資源化率91.4%であった。再資源化率は毎年高くなってきており、着実に成果を挙げている。